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長尺加工におけるSS400とS50Cの使い分けとトータルコストダウン

長尺加工におけるSS400とS50Cの使い分けとトータルコストダウン

レール、ガイド、フレームといった長尺加工が求められる分野ではSS400とS50Cがよく採用されます。

どちらも広く使われていますが、長さゆえの「歪み(ひずみ)」や「たわみ」、加工時の熱変形といった課題が顕著になる長尺加工においては、その特性の違いを正しく理解し、最適に使い分けることが製品精度とトータルコストに直結します。

仕様決定においてSS400が選ばれる理由

多くの図面で、長尺の精度部品加工においてSS400が指定されるケースはよく見られます。その背景には、次のような考え方があります。

考え①:コスト最優先

「とにかくコストを抑えたい」という要求から、材料単価が安いイメージのあるSS400が選ばれがちです。

考え②:「鉄の主流はSS400」という慣習

最も広く流通している材料であるため、「とりあえずSS400で」と、慣習的に選定されることが非常に多いのが実情です。しかし、この「SS400ならすぐに手に入る」という考えは、加工における変形や加工性の問題を考慮しておらず、結果的にコストや納期に跳ね返ってくるケースが多くあります。

高精度加工はSS400ではなくS50Cの方が良い理由

加工者の立場から見ると、特に高い精度を求められる部品において、SS400は扱いにくい材料とされます。主な理由は次の2点です。

理由①:変形リスク

SS400は、炭素含有量や内部応力が厳密に管理されていません。そのため、材料のロットによって性質が不均一になりがちです。この不均一性により、掘り込み加工などで材料内部の応力バランスが崩れると、変形(反りやねじれ)が発生しやすくなります。結果として、狙った寸法精度を出すのが困難になります。

理由②:加工性の悪さ

SS400は材質が比較的柔らかく「粘り」があります。この特性は、切削加工や研磨加工においてデメリットとなります。切削面が荒れやすく、特に研磨ではキレイな平面を出しにくいため、仕上げ作業に多くの時間と手間を要します。そのため、SS400を使用する際は、あらかじめ「焼きなまし」処理を施して加工性を改善した焼鈍材を選定することが推奨されます。

安定性とトータルコストを重視する最適な材料選定

安定性とトータルコストを重視した材料選定において、S50CはSS400に比べて多くの利点があります。

SS400の「400」とは「引張強さが 400 N/㎟以上」という最低保証値であり、材料の「硬さ」を示す数値ではありません。この数値のイメージから「強くて歪みにくい」と考えられがちですが、実際には、SS400は炭素量が少なく、比較的柔らかい材料です。一方、S45CやS50Cは炭素量が管理されており、その分SS400よりも高い硬度を持ちます。さらに重要な点として、S50Cは熱処理(焼入れ・焼戻し)によってに硬度を高めることができますが、SS400は炭素量が少ないため、焼入れによる硬化は期待できません。

SS400とS50Cの材料単価の差はわずかであるにもかかわらず、こうした特性の違いから、加工時における精度の安定性には大きな違いが生まれます。その結果、加工の難易度が下がり、手戻りや修正のリスクが減ることを考えれば、S50Cを選んだ方がトータルコストで有利になるケースが多くあります。

こうした背景から、当社ではお客様からSS400で精度の要求が厳しい図面をいただいた際、品質安定性とトータルコストの観点から、S50CやS53CNへの材料変更をご提案することがあります。